えこあくと2006
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第4章 研 究環境に配慮した新技術の研究開発 熊本大学には1,018名の教員が在籍(平成17年5月現在)しており、このうち「環境」というキーワードで検索可能な研究者は約200名であった。本学教員の実に約5人に1人が「環境」に関する調査研究を行っており、今世紀の最重要課題ともいえる環境科学分野への関心の高さが窺える。本章では、本学の教員による環境配慮型技術開発に関する研究内容について、3課題を取り上げて解説する。■はじめに 近年、有明海では漁獲量の減少・赤潮の発生・養殖ノリの色落ちなど水産資源をめぐる問題が顕在化している。有明海の環境異変の要因として、様々な物理・化学・生物学的影響が考えられているが、現時点では、原因究明のための基礎的調査の実施とともに、有明海の再生法を具体的に提言しそれを行動に移すことが強く求められている。ここでは特に、有明海の干潟とその周辺の環境改善に関する二つの調査研究を取り上げ紹介する。■干潟なぎさ線の回復技術の実証実験 海岸線の人工化で失われた希少生物の生息場所を回復するため、熊本県沿岸において人工の「干潟なぎさ線」を造成した。実験に用いた土砂は近郊の有明海から採集し、そこに稚貝の着底に適した砂質環境を整備した。さらに、塩生植物の植栽を施すとともに、ちどり状に配した潜堤も設置して、土砂の流失防止と地形・生態系の連続性を確保した。現在、定期的に地形変化・底質・水質・生物・植生等の調査を実施し、比較地点との相違等から干潟なぎさ線の回復技術の確立及び干潟なぎさ線の回復効果を検討している。■水圧利用型強制循環方式(人工巣穴)の底質改善技術の開発 干潟環境が悪化した直接的な原因の一つは、底質の泥質化などによる生物種の減少であると考えられる。このため、本研究では室内実験を実施するとともに、潮汐の干満によって干出する干潟域と干出しない海域において「人工巣穴」を設置し、底質中に空気が循環可能な経路を確保した。底質環境の改善効果を、その酸化還元状態の分布や微生物叢の変化を指標に定量的な評価を行う。また、失われた希少生物の回復状況についても調査している。Kumamoto University21有明海生物生息環境有明海生物生息環境の俯瞰型再生と実証実験再生と実証実験(平成17年度科学技術振興調整費)(平成17年度科学技術振興調整費)有明海生物生息環境の俯瞰型再生と実証実験(平成17年度科学技術振興調整費)沿岸域環境科学教育研究センター 水・地圏環境科学うかが

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