えこあくと2006
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■はじめに 衝撃エネルギーはパルスパワーと呼ばれ、その大きさは、世界で使われている電力、あるいは太陽のエネルギー密度に相当する。この衝撃エネルギーを1秒間に約1,000回連続的に発生させることで、従来の技術では不可能だったリサイクル技術の開発や、自然生態系の環境浄化に役立てることが可能になる。多くの研究分野の基盤技術として応用可能な「パルスパワー」による研究とその応用例を紹介する。■プラズマ放電現象を利用したプラスチック上の金属薄膜の分離技術 現在、家電製品の電子回路基盤などに使用されている金属メッキのプラスチックは、その回収技術の困難さを理由にほとんどリサイクルされていない。本研究では、対象物にプラズマ放電によって生じた衝撃波と熱を5 万分の1秒というごく短時間照射し、金属とプラスチックを容易に分離可能な技術開発に成功した。この結果、低環境負荷・低コストでプラスチック原料のリサイクルが可能になり、本技術を利用した「薄膜金属剥離装置(図4-4)」は、商品化に向けた研究が行われており、学術的・社会的に極めて高い評価を受けている。■水中ストリーマー状放電プラズマによるアオコ処理 河川・ダム湖に生息する有害藻類の除去を目的として、パルスパワーを利用したアオコ処理装置を開発した。水中に置かれた電極にパルスパワーを印加すると、直径10cm程度のプラズマを水中で生成できた。プラズマ中にあるアオコ群は、1回のプラズマ照射ですべて不活性化し、沈降した。アオコの細胞を調べたところ、通常細胞内に見られる気泡が、プラズマ照射で消滅した(図4-5)。太陽電池で駆動されたパルスパワー発生装置をいかだに載せ(図4-6)、熊本県内のダムでフィールド実験を行ったところ、水面に浮いているアオコ群の処理に成功した。現在、実用化に向けて企業と共同研究を進めている。大学院自然科学研究科 衝撃エネルギー科学衝撃エネルギー科学の深化と応用衝撃エネルギー科学の深化と応用(平成15年度 21世紀COE採択課題)(平成15年度 21世紀COE採択課題)衝撃エネルギー科学の深化と応用(平成15年度 21世紀COE採択課題)Kumamoto University23図4-4 薄膜金属剥離装置

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