えこあくと2011
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合津マリンステーションは、上天草市松島町にある熊本大学の附属施設です。研究施設、実習施設、宿泊施設、海洋生物飼育施設の他、30人乗りの研究実習船、走査電子顕微鏡などの設備があります。本施設では、有明海・八代海を始めとする沿岸域(海岸周辺と浅い海域)の生物多様性の解明と保全、水産資源の管理・増殖、地域の環境教育(実習や観察会の実施)などといった、多様な研究と教育を行っています。沿岸域は、生物相が豊かで、魚介類など生物生産も高い地域ですが、世界人口の4分の3が生活しているため、さまざまな環境問題が起きている場所でもあります。1.生物多様性保全への取り組み 生物多様性とは、「地球上の様々な環境に、様々な生物が暮らしていること」です。日本の沿岸域は、世界最大の生物多様性をもつ海域であると考えられていますが、環境が悪化している場所が少なくありません。合津マリンステーションは、モニタリングサイト1000沿岸域調査(干潟)の永浦干潟サイトを担当し、毎年、底生動物相(貝類や甲殻類など)の詳しい調査を行っています。モニタリングサイト1000は環境省の事業で、全国の多様な自然環境(高山からサンゴ礁まで)を長期に渡って調査することで、日本の自然環境の質的・量的な劣化を早期に発見することを目的としています。干潟サイトは全国で8ヵ所しかないため、我々の調査結果は重要です。また、合津マリンステーションは、「日本長期生態学研究ネットワーク」の準サイトに登録されており、ナメクジウオやハマグリなどの長期に渡る個体群動態も追跡しています。 今後も、我々は、沿岸域の生物相を明らかにすると共に、レッドリスト(絶滅が心配される生物のリスト)の作成、沿岸環境の再生・創成、さらに社会や行政に対して環境保全・改善に関する政策提言を行っていくつもりでいます。2.生物資源の持続的管理へ向けた取り組み 移動能力の乏しい水産資源(例えば貝類など)は、厳格な管理を行うことで持続的な漁獲が可能となり、漁獲量も増加することが見込まれます。合津マリンステーションでは、主に二枚貝を対象に、水産資源の管理技術の開発、畜養・養殖技術の開発、資源管理に関する政策提言の実施などを行っています。特に、タイラギの養殖法に関しては、昨年度に特許を取得するなど卓説した研究を行ってきました。 さらに、最近は、ハマグリの資源量増加のための研究を行っています。我々日本人にとって、ハマグリは、合津マリンステーションの活動合津マリンステーション宿泊施設もあり、研究のための長期滞在も可能八代海湾奧部での底生動物調査有明海に比べ、八代海のデータは乏しい53Kumamoto University自然共生スタイル | 環境配慮5自然共生スタイル 環境配慮第5章

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