えこあくと2011
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非常に身近な二枚貝でした。全国各地の貝塚から大量に出土する他、ことわざや物語にも頻繁に登場することからもそれがわかります。しかし、現在ハマグリは多くの地域で激減し、様々なレッドデータブックに、絶滅の危険がある種としてリストアップされていています。熊本県は、国内最大のハマグリ生産県ですが、30年前には年間1,000 t以上もあった漁獲量が、最近では50 t程度に減っています。 我々は、ハマグリの資源管理が不十分な熊本市白川河口と、厳格な資源管理が行われている福岡県糸島市加布里湾で、2006年1月より定期的な定量調査を行い、生活史特性の把握、個体数激減の原因解明、さらに、資源管理技術の確立を行っています。研究の結果、大型のハマグリが少ない白川河口でも、稚貝の着底や成長は良好で、資源管理の有効性が示されました。また、2007年からは現在は使われていない車海老養殖場や真珠養殖場でのハマグリの養殖技術の開発を進め、特に真珠養殖場の垂下養殖は成長が良好なことがわかりました。これらの養殖技術の確立は、車海老養殖場や真珠養殖場の有効利用にも繫がるものです。また、アサリやハマグリなど干潟を支える二枚貝が増えることは、単に水産的な意味だけでなく、食物連鎖を通して、干潟の生物多様性の向上にも寄与すると考えられます。3.環境教育の取り組み 合津マリンステーションでは、臨海実習・理科研修・講演会・観察会といった多様な環境教育の取り組みが行っています。臨海実習は、主に春休みと夏休みに実施されますが、大学生だけでなく、中学・高校生を対象とした臨海実習もあります。また、上天草市と共催で、7~8月に干潟観察会と海蛍観察会をそれぞれ3回行っています。干潟観察会ではハクセンシオマネキなどのカニ類を、海蛍観察会では夜の海岸でウミホタルの生態を観察しています。市外からの参加者も少なくありません。地元の環境を知ることは、環境保全の第一歩です。東日本大震災以降、「海は怖い」という漠然としたイメージを持つ子供たちが増えていると聞きます。このような時だからこそ、子供達が海に親しみ、海を正しく理解することが大切だと感じています。ハマグリの養殖実験(上天草市維和島)放棄された車海老養殖場を有効活用海蛍観察会夜の砂浜で行われ、毎回100名近くが参加する人気の観察会Kumamoto University54自然共生スタイル | 環境配慮5

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