えこあくと2015
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自然共生スタイル018Kumamoto University左/野口 栞 さん   (工学部物質生命化学科4年)右/与古光 早智 さん   (工学部物質生命化学科4年)どのような研究内容か教えて下さい河川の水は勝手に使えないことはご存知ですか?河川水を利用するには水利権の取得が必要で、権利がない人は勝手に使えないのです。一方日本では、法律上地下水は、土地の所有者が汲み上げて良いルールになっています。そのために発生したのが、1960〜70年代の3大都市圏での地盤沈下です。0メートル地帯と呼ばれる、海水面より低い地域が生じて、河川沿いに高い堤防を設けるといういたちごっこが続いていました。70年代中頃から地下水の汲み上げ量を制限するルールを設けることで、地盤沈下はとまり、地下水位は非常に早いスピードで自然状態に近いレベルまで回復しました。この急速な地下水回復の実態を踏まえ、科学的にサポートされた地下水利用を目指してCREST研究を始めました。熊本は、他県と比べると地下水利用が活発な地域です。この土地柄を積極的に利用して熊本を研究フィールドとしました。地下水の流動量の研究に加えて、私は水文学という専門を利用して地下水の動きや質も研究しています。また熊本大学の研究者だけでチーム編成をしたことも特長の一つです。地下水の研究では、予想以上の答えが出たり、地域スケールの動きの解明は地域に直接的に貢献できるので、面白くやりがいのある研究です。この研究がどのようなことにつながるか教えて下さい河川水は流れが速いので汚染されても浄化されやすいです。一方、地下水は表面からの影響は河川水よりは受けにくいのですが、動きが遅いために一度汚染されるとなかなか浄化できません。そのため、地下水を汚染しないルールが必要です。例えば河川水を汚さないために、工場などに水質維持のルールが適用されると、その対策が必要となります。結果として生産コストが上昇するため、商品の価格を高くする必要が出てきます。同じ様に、地下水の水質を守るためには、その負荷原因となる農畜産業に軽減のための負担をかけることになるため、最終的には地下水保全のコストを消費者が支払う必要が出てきます。せっかく良い商品でも、価格が高いと消費意欲が低下します。それをシステム的に消費してくれるようにする必要があります。このような社会システムを、科学的根拠を踏まえて作り上げるようにしたいと考えています。高校生や大学生に伝えたいメッセージはありますか?地面の下で目に見えない地下水のことを、是非、知って頂きたいと思います。熊本県は、他県に比べると、地下水に対して先進的な取り組みをしています。「地下水と土を育む農業推進条例」という条例が最近できたのをご存知ですか?恐らく熊本県だから、このような条例が作れたと思っています。持続的な地下水利用には、農業や流通、社会システム的にも関係してくるので、地域の特性に応じた地下水の使い方を提案できればと思います。- 熊本大学の「環境配慮」に繋がる研究活動とは? その研究の最前線に立つ熊大の研究者に、学生がその思いについて聞きました -Interview“ 生活に大切な地下水の 上手な使い方を 科学的に研究する ”QQQCRESTとは社会的・経済的ニーズの実現に向けた戦略目標に対して設定され、インパクトの大きなイノベーションを創出するためのチーム型研究です。

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