えこあくと2015
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自然共生スタイル024Kumamoto University硫化メチル(ジメチルスルフィド:DMS)です。DMSは、プランクトンが海水から身を守るために産生している物質の分解物ですが、それが空気中に出ると海の香りがします。海面から発生したDMSは空へと上がっていくと、雲ができるための核になったり、硫酸の粒になります。このように水蒸気とDMSが反応して雲ができる現象も、メソ領域ですが、淡水のバイカル湖でも氷の下で同様な化学物質が生成しているのではないかとロシアとの共同研究を進めています。これは自然起因の微小粒子ですが、大気汚染で話題のPM2.5もメソ領域科学で、やはり気体が集まって粒子になります。メソサイズの浮遊粒子を吸い込むと肺にまで達しますので問題です。樹木から発生するイソプレンという物質をご存知ですか?イソプレンはゴムの原料ですが、光化学反応によって健康に有害なホルムアルデヒドに変わります。このように、植物を起源とした物質の生成やその微小粒子への取り込みが現実に起こっています。このような目に見えない物質を探って、環境対策につなげたいと思っています。高校生や大学生に伝えたいメッセージはありますか? メソ領域科学は、見えそうで見えないものを化学的に探る学問です。メソ科学の歴史は浅く、熊本大学が掲げる「メソ領域科学」で、新しい分子の集合体の発見や創出ならびに環境・医療・エネルギーなどの分野で有用な知見や用途開発が進むことを期待しています。みなさんも見えそうで見えないこの領域に興味を持ってもらえたらと思います。Q左/竹下美海 さん(工学部物質生命化学科4年)右/木下 聖 さん(工学部物質生命化学科4年)研究の概要 メソ(meso)は、「中間」という意味で、マクロ(>100μm)とナノ(1‒10nm)の間に位置するスケールの領域です。これまで蓄積したナノテクノロジーの研究開発は、新規機能性素体を提供する形で「メソ領域科学」の発展に寄与できることから、メソ領域科学における基礎的な学問や技術を確立し、その上で環境、材料、機器開発、医薬分野での応用開発を目指します。- 熊本大学の「環境配慮」に繋がる研究活動とは? その研究の最前線に立つ熊大の研究者に、学生がその思いについて聞きました -Interview上/大気化学反応における二次生成物の研究上と右/植物プランクトンが生成する化学物質の不思議(バイカル湖)左/夏のバイカル湖での調査PM2.5の化学 : 森林大気の化学反応について探っている。

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