えこあくと2015
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「環境省九州環境パートナーシップオフィス(EPO九州)」についてKumamoto University087九州環境パートナーシップオフィス(EPO九州)コーディネーター澤  克 彦えこあくとの第三者意見2015えこあくと2015環境報告書にかかる第三者意見今回、リニューアルされた環境報告書を拝見させていただきました。ご覧になるとわかるように、記載内容は環境分野にとどまらず、熊本大学全体の取り組みを網羅的に紹介する構成となっていることに驚きました。断片的に認識していた(されていた)熊本大学の様々な取り組みについて、幅広くそして奥深く掘り下げまとめられている点は、特筆に値します。冒頭、主に大学内での学生生活の視点から環境配慮・取組を紹介することで、大学の当事者としての学生の存在感を打ち出し、彼らへ意識づけすることの意図が読み取れます。伏線として、目次ページから続く各種データによる熊本大学の環境取組の見える化と訴求を組み合わせることにより、環境報告書のサマリーとしての役割を果たしている点は、雑誌のように手に取られ気軽に見られることの想定がうかがえ、工夫が重ねられていると感じました。続いて、環境3社会(自然共生・低炭素・資源循環)を切り口とした、各専門分野について、研究者の視点から先駆的な研究・教育活動が紹介されています。総合大学らしい、多岐にわたる専門性と研究者の多様性が、複雑な環境課題の全体像をあらわしているといえます。とりわけ、研究者の声や姿が誌面をとおして身近に感じられることで、各研究テーマへの関心喚起、すなわち環境課題へのアプローチを広げる環境報告書自体のコミュニケーション機能として期待されます。しかしながら、今日の環境課題が、社会的・政策的な意味においても重視されていることをふまえれば、社会科学の視点から環境課題(持続可能社会)について取り組む様子が十分にうかがえなかったことは残念な点といえるでしょう。また、研究者の視点から深掘りするページにあわせて、大学としての環境対策をテーマごとにとりまとめ紹介することで、個別研究と具体的な環境対策の連関を示している構成は好感を持てます。ここについて、もう一工夫を期待すれば、「○○を行っています。○○を利用します。○○を図っています。」という行為事実の表現にとどまるのではなく、それら大学としての活動をとおして、どのような効果や影響をもたらそうとしているのか、つまり環境メッセージの打ち出しが求められます。確かに、本文やキャプションには記載がありますが、読み込む前にキャッチコピー的に表現することで、取組が際立ち、活動のねらいが伝わります。報告書後半に入ると、環境教育や環境配慮活動について、熊本大学の研究・教育全体を俯瞰した横断的な取組がよくまとめられています。惜しむらくは、ページ構成的に学生の視点と研究者インタビューをつなぐ位置にあることが望ましいと感じます。このパートは、科学分野に分け隔てなく環境課題への対応・配慮行動が必要であることを示すものであり、その上で個別の専門研究が活きてくるというメッセージになります。そうした一連の取組を見える化するセクションとして、データ一覧が整理されています。日頃の環境取組の集大成とも言える熊本大学の環境力を示しています。中でも67ページの環境マネジメントのイメージ図は取組全体を表現しており、「熊本大学 エコキャンパスの実現」という理念も示されています。実はこのメッセージこそ、この報告書が提示するビジョンともいえ、報告書内における取り扱いのプライオリティは本来、もっと高いはずです。最後に、こうして取りまとめられた環境報告書が報告・公表において完結するのではなく、学生の教育や俯瞰的研究活動に活用されることが望まれ、ひいては環境安全センターが環境活動・配慮行動のイノベーターとして、全学的な環境教育(今日的にはESD)を力強く牽引することを期待し、第三者意見のまとめとします。● EPO九州に期待される役割EPO九州は、パートナーシップによる課題解決を目指し、地域におけるNPO、企業、行政、市民の主体的参加によるパートナーシップづくりに役立つ拠点として、①環境省や国の行政と、地域の市民、NPO、企業、地方公共団体などとの間の情報の共有・交流、パートナーシップでの取組を推進する役割②地域の拠点として、行政単位を超えた各主体の協働での取組を支援する役割を担います。● EPO九州の取組む事業EPO九州は、持続可能な九州をつくりだす環境パートナーシップの力を「九州の環境力」と位置づけ、次の取組をしています。1.環境活動に関する情報の収集、整理、発信・各主体と連携を取り、地域の環境に関わる情報の収集・提供・政府や地球環境パートナーシッププラザなどと協力し、国レベ ルや国際的な環境に関わる情報を地域に発信・地域の取組の状況、意見を政府などにつなぐ 2.対話・連携・学習の場づくり・行政、市民、NPO、企業など様々な主体間での意見交換会、ワークショップを開催3.九州地域の環境課題の理解と改善活動・地域でのNPO活動を、パートナーシップでの取り組みの側面から支援環境省では、地域での環境パートナーシップづくりの支援拠点としてEPO九州を2007年9月に設置しました。

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