えこあくと2016
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自然共生スタイル032Kumamoto Universityどのような研究内容か教えて下さい私は、フィールドに出て化学的な視点で環境中の有害物質の汚染と影響を調べています。このプロジェクトでは、八代海の泥の状態や生物の状況を調査しています。昔の八代海は魚やエビなどが沢山採れて、赤潮の発生も少なく、今より豊かで安定した生態系だったように思うのですが、最近は漁獲量が減ったり赤潮が頻発したりで、タイやブリの養殖では億単位の漁業被害が数年おきに出ています。海が疲弊して環境が変わってきているのではないかということで、約10人のメンバーでいろいろな視点から八代海の現状を科学的に調査するのがこのプロジェクトの大きなテーマになっています。また、環境汚染を指摘するだけでなく、同時にその場所を浄化する試みも行っています。今学生が取り組んでいるのがアマモという水生植物です。植物は葉と同じように根からもいろんな物質を出していて、アマモが生えている場所の泥は酸素が供給されることで微生物が元気になって有害物質を分解してくれる、そういうメカニズムの検証も行っています。この研究がどのようなことにつながるか教えて下さい海の泥の中にどういう成分がどのぐらいの濃度で含まれていて、水中や泥の中の生物にどのような影響を与えているか、主に人起源の物質で強い発がん作用を持つと言われる多環芳香族炭化水素類(PAH)に注目しています。この物質は、車の排気ガスや山火事など物(有機物)が不完全燃焼したときに発生する物質で、人体に対して有害ですが日本ではそれを規制する基準も法律もありません。古くて新しい有害物質ともいえますが、今まで見過ごされていたようなものに対して新たな手法でリスク評価を行い、行政に生かせる新基準を作っていくことが最終目標です。研究で楽しかったことは何ですか?やはり、今まで分からなかったことが明らかになったとき、何か新しいものを発見したとき、ですね。実験後の生データを最初に見て予想を超えた結果が得られて、それを検証できたときは、とくに嬉しい瞬間です。また、修士の2年生くらいになると学生自身がアイデアを出して実験スキームを組み立て、データ解析をしていくこともあります。目の前の学生の成長過程をリアルタイムで見れるのは、とても楽しいことです。高校生や大学生に伝えたいメッセージはありますか。やる気スイッチが入ったときの学生の目は、生き生きしています。いつスイッチが入るか分かりませんので、高校生や大学生には常に好奇心のアンテナを張り巡らせて欲しいですね。私がこの研究分野のスイッチが入ったのは大学3年生の時の1冊の本との出会いでした。今も大事に手元に置いています。これから「読書の秋」を迎えます。人生の転機になるような有意義な情報をキャッチするために、教科書やネットだけでなく哲学や文芸といったいつもと違う分野や、ちょっと難しい専門書にも手を伸ばしてみてはいかがでしょうか。“ 汚れたら掃除。 部屋も海もいっしょ!”QQQQ左/槐島 慎 さん、 右/平野 英美 さん  (共に社会連携課 研究コーディネーター(URA))文部科学省特別経費とは文部科学省から運営交付金として特別に配分される経費であり、「大学の特性を生かした多様な学術研究機能の充実」の項目で採択されました。- 熊本大学の「環境配慮」に繋がる研究活動とは? その研究の最前線に立つ熊大の研究者に、職員がその思いについて聞きました -Interview

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