えこあくと2016
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自然共生スタイル034Kumamoto University“ 重い水(同位体) から降水の 起源を探る”CRESTとは社会的・経済的ニーズの実現に向けた戦略目標に対して設定され、インパクトの大きなイノベーションを創出するためのチーム型研究です。- 熊本大学の「環境配慮」に繋がる研究活動とは? その研究の最前線に立つ熊大の研究者に、職員がその思いについて聞きました -Interviewどのような研究内容か教えて下さい降水に含まれる安定同位体(注)を分析して、気象との関係等を調査しています。現在の研究は、インドネシア気象庁の人と協力して、雨を採取してもらっています。現地気象台のデータを参照しながら、同位体比の変化や変化要因を調べます。日本でも同様の観測を行っており、約60地点の降水を収集しました。熊本大学では、気温や風速を計れるデータロガーと合わせて降水の採取容器を設置し、黒髪南キャンパスで収集しています。(注)地球上の元素には、元素の性質を決める「陽子」の数は同じでも、「中性子」の数が異なる為、同じ性質を有する原子でありながら重さが異なる原子が存在します。これを「同位体」といいます。このうち安定して存在する(放射線を出さない)同位体を安定同位体といいます。この研究がどのようなことにつながるか教えて下さい安定同位体と気温の関係は、鍾乳石等から得られるデータでも分かりますが、気候の変遷や直接的な変化原因は分かりません。私の研究では、地道に各地で降水を採ってきて、降水に含まれる安定同位体比を測って気候変化の要因を解析します。例えば、昨今はエルニーニョ現象等による海面水温変化が原因で、世界各地で異常な天候が引き起こされています。降水の安定同位体比の変動解析を通じて、異常気象などの動態解明につなげたいと考えています。気候変動等の解析には、気候モデルを使う必要があるため、他大学の研究者と連携して取り組んでいます。研究で楽しかったことは何ですか?海外のフィールドワークで、信頼関係を作ることが楽しみの一つです。私の研究では、インドネシアの気象庁の人に頼んで、ガラス瓶を渡して、雨を採取してもらっています。1年に1回、採取済みのガラス瓶を取りに行って、どんな研究をしているかを説明し、感謝の意を込めて食事会を行います。降水の採取作業の中で、気象台の職員に協力してもらうことになりますが、末端職員は何の研究なのか、ほとんど理解していないと思います。そこで、年に1回だけでも日本人が来て、一緒に食事をして話をすると、お互いに理解を深めることができます。高校生や大学生に伝えたいメッセージはありますか? 自主的に勉強しましょう。自分の学生時代とどうしても比べてしまいますが、私の学生時代は、指導されたことは、ほとんどありません。試行錯誤の結果、いろいろな知識を身につけ、研究が進んでいく面白さを味わってください。QQQQ左/大藤 康一朗 さん、右/鳩野 恵梨 さん (共に社会連携課 研究コーディネーター(URA))
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