えこあくと2017
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Kumamoto University017有明海・八代海の  自然環境の再生・創生を目的とする         総合的・実践的研究自然共生社会に向けてResearch研 究01国立大学法人機能強化促進補助金Interviewee大学院先端科学研究部(工学系) 准教授皆川 朋子 先生どのような研究内容か教えて下さいアユは八代海に流入する球磨川を代表する生物の一つであり、重要な水産・観光資源です。しかし近年、アユの漁獲量は減少傾向にあることが報告されています。このような中、河口から20㎞地点にある荒瀬ダムの撤去が平成24年より開始され、現在、ダム湖だった区間に流水が回復し、これによりアユが生息する瀬がよみがえりました。回復した流水区間にどの程度アユが生息できるようになったのでしょうか?アユの生息量を評価するため、河川水中に含まれるアユから放出されたDNA量を測定しました。その結果、回復した流水区間においても多くのアユが生息していること(図)、また、瀬ごとのアユの生息量を評価することができました。さらに、アユの生息に適した瀬の流速や水深などの物理的な環境条件も明らかになってきました。今後は、アユの産卵場、稚魚期を過ごす沿岸域、海と河川の連続性について評価していきたいと考えています。この研究がどのようなことにつながるか教えて下さい自然環境の保全・復元や自然と共生した川づくりを行うためには、人間が環境を改変することによって、川の環境や生物にどのような影響が生じるのかを明らかにしたり、河川の流れの状況や生物の生息場との関係を明らかにしておくことが必要です。例えば、今回の研究のように、水中のアユのDNA量を測定することでアユの生息場が明らかになり、これと水理的な検討結果と組み合わせて解析することで、アユにとってよい生息場とはどのような場所でどのような条件が必要か?また、アユが上流に遡上したり、下流に降下できない場所はどこか?などの問題点を明らかにすることができます。これらは、アユの生息場の改善などに役立つ情報になると考えられます。また、球磨川におけるアユの減少は、様々な人間活動によって河川や海の環境が改変QQ採水の様子採水の様子

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