えこあくと2017
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自然共生スタイル020Kumamoto Universityどのような研究内容か教えて下さい私は様々な研究を行ってきましたが、今回はそのなかでもノリの研究について二つお話します。1つはノリの色落ちの仕組みを探ること、2つ目はノリの表面に付いているバクテリアについてです。ノリは、春から夏まで貝殻の中で糸のような枝(糸状体)をのばしながら成長していきます。秋になると胞子を作り、発芽して冬の間成長し大きな葉っぱ(葉状体)になり、これが今食べているノリになります。葉状体を実験室内で培養し、環境変化に対する応答の仕組みを調べています。栄養欠乏により生じる「色落ち」の研究もその一つです。ノリの培養では、他の植物とは異なる点があります。それは、培養液や通気する空気は滅菌されていますが、ノリの葉状体には特定の細菌が付着した状態で培養されていることです。葉状体は無菌状態になっても生長はできますが本来の葉の形にはならず、細胞の塊になってしまいます。葉状体が正常な葉の形になるには特定のバクテリアが必要であることがわかっています。ノリには沢山の種類のバクテリアが付いていますが、葉状体形成以外の働きについては調べられていません。最近そのひとつとして、葉状体の生長を促進する付着細菌の研究を始めています。この研究がどのようなことにつながるか教えて下さい養殖のノリは海のミネラルが不足したり赤潮の影響で窒素がなくなったりすると、すぐに色落ちしてしまいます。熊本県はノリの養殖が盛んなため、ノリが色落ちしてしまうと、多大な被害を及ぼします。そこで、色落ちしない品種を開発するのに繋げるためにも、ノリの色落ちの仕組みを探っています。研究で楽しかったことは何ですか?私は、元々は海の方ではなく陸の方の研究を行っていました。だから海の生物については何もわからなかったので水産のチームに弟子入りしました。そこで何もわからなかった私に学生たちはいろいろと教えてくれました。私は若返ったような気分になり学生気分を味わうことができたのがとても楽しかったです。また、今までは好きなだけでは何もできないと思っていましたが、案外好きでいることで新たな発見ができるということを知れたのも大きな収穫だったと思います。自分がおもしろいと思った新しいことを突き詰めて研究していくことはとても楽しかったです。高校生や大学生に伝えたいメッセージはありますか?身の周りのおもしろいなと思うことをとことん突き詰めてください。そしてそのおもしろいという気持ちをずっと忘れずにいてください。そうすれば、好きという気持ちに変わり、好きならば何でもできていきます。また、何かを突き詰めることで世界が広がり、こんな事もやっているのか、自分もやってみたいなという気持ちがでてきます。皆さんにはそのような気持ちを体験してもらい、興味のあることを突き詰めていくことの大切さを知ってほしいです。“ 閉鎖性海域の    自然環境”QQQQ拠点形成研究Bとは学内公募を通じて選出された、時代を先導する新たな価値を産み出す研究プロジェクトのうち、今後世界トップレベルを目指しうる研究プロジェクトのことです。- 熊本大学の「環境配慮」に繋がる研究活動とは? その研究の最前線に立つ熊大の研究者に、高校生がその思いについて聞きました -Interview右/庄村 実優 さん (熊本県立宇土高等学校 2年)左/松瀬 友萌 さん (熊本県立宇土高等学校 2年)

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